先日の事です。
朝、電話がありました。
「シェフ?」
「はい。」
「Kです。」
「あっ!いつもありがとうございます。」
「今日の夜、大切な御客様を連れて食事に行きたいんだけど、いいかな?」
「はい。是非お待ちしています。」
「じゃぁ、いつもの様に御願いね!とても大事な方だから宜しく!!!」
という電話でした。
常連様なのですが・・・・・・・・いつもと違う点がありました。
まず、
旦那様が予約の電話をしてくるのは初めてであります。
それに、
御客様を連れていらっしゃるのも初めてであります。(いつもは、奥様と二人か御家族でいらっしゃるので)
これはただ事ではないような気がしましたが、いつも通りのおもてなしを心がけようと思っていました。
御来店の時間です。
んんんんんん・・・・・・オーラが凄い御客様であります。
とても大切な御客様なのでしょう。
その常連様は、ワインがとてもお好きで、自分の家の地下にワインセラーがあるそうです。
3000本くらい所有しているとか・・・・・・・・。
いつも、お店のワインリストから、白ワインを御注文していただき、赤ワインは自分の家から持ち込みます。
何を持ってくるのか、毎回楽しみで、ある程度のメニューは決めておきますが、持ち込まれたワインを見てからメニューを確定させるのが毎回の私の役目です。
ドキドキなのです。
「今回は何かな???」
「いつも凄いワインばかりだけど、今回は御客様と一緒だから、<ラトュール>とか<マルゴー>かな?」
と思いながら、袋から出すのをワクワクしながら待っていると・・・・・・。
「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんん?」
「まさか・・・・・・・???」
「そんな訳は・・・・・・・・・・???」
「嘘だぁ・・・・・・・・???」
と私の中の私がつぶやき・・・・・・焦りました・・・・・・。
「あっッ・・・・・・あっ・・・・・・あっッのラベルは・・・・・・・。」
「マネジャー!!!!!!!!!!!」
「あのワインの名前と年代を聞いてきて下さい!!!」
席に向かったマネージャーは、大事そうにそのワインを抱えて私のところに持ってきました。
「わああああああああああああああっつ!!!」
「やっぱりだぁ!!!!!!!!!!!」
「ロ・・・・・・・ロ・・・・・・・・・ロ・・・・・・・・ロマネ・・・コンティ!!!」
きっとワインに興味がない方も名前ぐらいは聞いた事があるでしょう。
世界最高峰ワインであります。
一瞬、記憶が飛んでいきそうになりましたが、どうにか平常心を取り戻して、いつも通りの気持ちで料理に取り掛かりました。
ただ・・・・・・・、
ロマネ・コンティは飲んだことがありません・・・・・・・。
ワインに合わせての料理・味付け・・・・・・・飲んだ事が無いので解りません。
特徴は、本などで知っていましたが・・・・・・・。
きっと常連様も百も承知で持ってこられたと思いますし、背伸びしても仕方がないので!!!!!
シェ・ボンの味に、本で読んだ知識、前に飲んだすぐ隣の畑で作られた<リシュブール>というワインの味を思い出し、料理を仕上げました。
恐る恐る・・・・・・「大丈夫でしたか?」と聞くと・・・・「美味しかった!バッチリ!!!」と御言葉をいただきました。
良かった・・・・・・・・・。
その常連様は、必ず、グラス一杯分のワインを私に残して下さいます。
でも・・・・・・・・、
「今回は、流石に残さないだろうなぁ・・・・・・・・・。」
と思いつつ、デザートを出し終えた後、心の中で・・・・・・・、
「飲みたい・・・・・・飲みたい・・・・・・飲みたぁーーーーーい!!!」
と思っていたら、
何と!!!
心が通じたのか、今回も残してくれました。
ありがたくいただきます・・・・・・・。
こうして、やっと私は念願の「ロマネ・コンティ」と出逢いました。。。
「この一杯でいくらするんだろう?????」
「いやっ・・・・・そんな事は考えないで、味わう事にしよう・・・・・・・。」
また何時か出逢う約束をして、ロマネ・コンティは私の身体の中に消えていきました・・・・・・・・・・。